第2章 兄と妹とその周辺
「なんか言った?」
仏頂面でお弁当を片付けていた所で、望が何か言った気がしたが、「何でもない」と誤魔化された。
相変わらず、望の一つ一つの行動は何かと意味深だ。
いつも何か知ったような顔をしてる。
だが、それはいまさら気にすることでもない。
「ま、男は突然オオカミになるから気をつけなさいよ。勢い余って食べられちゃうかもね♪」
楽しそうにしている望を無視して、私は鞄にお弁当箱を閉まった。
オオカミ…幸男に限ってそれはない。
健全な男子高校生、エロ本の一つや二つあるだろう(どこにあるのか知らない)が、理性をなくして義理の妹を襲うほど飢えてもいないだろう。
ましてやあの女子への免疫の無さじゃ、襲えるものも襲えない。
「うん。幸男に限ってそれはない」
「なに一人で納得してんのよ。案外「絶対ない」って思ってることに限ってあったりするのよ?」
「それでも絶対ない!!」
「あ、そう。なら、私は勝手に何かあることを期待してるわ」
「捨ててくる」と言って、望は飲み干した紙パックとゴミ袋を持って席を立った。