第2章 兄と妹とその周辺
「あー、俺もすっかり忘れてた。悪い、ありがとな」
これだけ聞くと、夫婦のような会話だ。
はたして本当にそういう関係なのだろうか。
「ちょっと聞いていいっスか!?」
「ん?どうした、黄瀬」
ずっと聞きたくてしかたなかった。
この二人の関係を聞けるとなると、ワクワクして身を乗り出してしまう。
「もしかして、二人は恋人同士なんスか!?」
もし恋人同士なら驚きだ。
あの厳しくて真面目な笠松先輩に、こんな可愛い彼女がいるなんて、ギャップにもほどがある。
だが、これを聞いた莉緒は途端に笑いだし、笠松先輩はぽかんとした。
「え?違うんスか?」
「当たり前だろ、黄瀬。こいつに彼女が作れると思うか?」
隣で聞いていた森山先輩が、諭すように言った。
もちろん、森山先輩たちも大爆笑だ。
「まぁ、そういうイメージはないっスね」
「そうだろ?」
「も(り)やま先輩!!そ(れ)キャプテンにしつ(れ)いっスよ!!」
じゃあ恋人同士じゃないならなんなんスかね…。
幼馴染みとか?
「莉緒ちゃんと笠松は兄妹だよ」
話が進まないと見かねた小堀先輩が、横から教えてくれる。
「兄妹!?うわ、似てないっスね〜」
「当たり前だ。俺たちは義理だ、義理」
面白いので恋人というのを期待していたが、兄妹というのは予想外だった。
しかも義理とは恋人より面白い。