第2章 兄と妹とその周辺
「いってー!!何するんスか、笠松先輩。モデルの顔に傷でも付いたらどうするんスか!?」
「知るかそんなもん」
笠松先輩は怒っているせいか、莉緒がいることに気付いていない。
「お前ら三人もさっさと着替えろ!!レギュラーが遅刻なんてシャレになんねぇぞ!!」
傍にいた森山先輩、早川先輩、小堀先輩をも怒鳴る笠松先輩。
本当に気付いていないらしい。
それか周りにいるのが長身のバスケ部なので、隠れて見えていないのかもしれない。
「それより笠松先輩。先輩にお客さんスよ」
立ち上がり、シャツを払いながら言った。
「客?誰だ?」
思い当たらないのか、笠松先輩は顔をしかめる。
「笠松に女の子の客とか一人しかいないだろ」
森山先輩はさらっと言って、笠松先輩の肩をポンと叩いた。
「女子って…おまえまさか!?」
「幸男気付くの遅いって」
笠松先輩が驚いて俺たちの方を見た時、莉緒は笑顔を浮かべていた。
「莉緒!!おまえ、何でここに!?学校はどうした!?」
「あれ、言ってなかった?今日2限からだから、朝遅いんだよ」
「聞いてねぇよ」
駆け寄った笠松先輩は、でこぴんをかます。
莉緒は「痛っ」と言って、おでこをおさえた。
「で、用件は何だ?」
「お弁当渡すの忘れてたから、朝余裕あったし、届けにきた。はい、どーぞ」
肩からかけていた鞄から、青い布に包まれたお弁当をだす。
笠松先輩はそれを片手で受け取った。