第2章 兄と妹とその周辺
小堀先輩が紹介しようとしたところで、早川先輩が莉緒に気づいて駆け寄ってきた。
早口で相変わらずラ行が言えず、ボリューム異常に大きい。
そのおかげで、小堀先輩の紹介が聞けなくなった。
「早川も久しぶり。けどラ行言えてない、うるさい」
こちらも莉緒は、ばっさりと切る。
切られた側は、先程よりもだいぶ小さい声で「ごめん…」と呟いた。
「それより小堀さん、幸男ってどこにいますか?」
呼び捨て!?
しかも切り替え早っ!!
「笠松なら、奥で監督と話してるよ」
「うわ〜、ちょうどタイミング悪かったんですね」
「まぁ、すぐ終わると思うけど。何かあった?」
「はい、ちょっと忘れ物を届けに」
「笠松が忘れ物か…珍しいな」
「いえ、幸男が忘れたっていうより、私が渡すの忘れてただけで」
二人をばっさり切った藍臣生は、普通に小堀先輩と話している。
とりあえず…、この人はいったい笠松先輩とどういう関係なの!?
早川先輩のせいで途中で話が変わっちゃったから、全然わかんないんスけど…。
自分の中の疑問を解決しようと、直接尋ねようとした時、今度は莉緒が探している張本人に遮られた。
「黄瀬ー!!てめぇなにサボってんだ!!しっかり片付けしろって言っただろーが!!」
怒鳴り声と共に、再び飛び蹴りが背中にお見舞いされる。
そして、先程と同じように、かるく前に吹っ飛んだ。