第2章 壱
そうこうして歩いているとアパートまで到着する。
私たちは私が今使っている部屋まで行くとその中へと入った。
彼のおかげでここ一週間の間で最低限の家具は揃ってきた。
彼はそれらの家具に触れると、彼の異能を使っていく。
彼の異能というのは触れたものに残った記憶を読み取れるらしい。
こうして侵入者がいないかどうか2日に1度、確認してくれているのだけれど、私にはよく理解できないなと思う。
彼は私に異能があると疑っていたけれど、何度考えてもそんな類の能力は私にはない。
「……大丈夫そうですね」
一通り部屋の中を調べ終わると彼はそう言った。
「そうですか、良かったです」
彼の言葉に私は胸を撫で下ろす。
それも束の間のことであった。
「それと一つ報告があるのですが」
「はい?」
「貴方の家に出入りしていた侵入者を捕らえました」
彼の言葉に緊張する。
「ただ、組織の中でも下の構成員でしたのでそこまで情報には期待できない状態です」
「そうなんですね」
振り出しに戻った感じに少し落ち込む。
むしろ手がかりのない点では行き止まりにいるような気分だ。
「次に構成員が新たに送り込まれる可能性が高いです。こちらでも対策しますが、万が一に備えて出来る限り用心してください」
「……はい」
万が一のあとはぼかされているけれど、なんとなく想像はつく。
そういう状況なんだと、日常から引き剥がされるような気がした。