第15章 すれ違い
常にみんなに囲まれて乗り物に乗った。
みんな徹底的に守ってくれてる…
悪い人の気配は私だってわかるのにな…
東京駅に着いて高専へ向かう電車に乗り換える時に、見覚えのある白髪が見えた。背が高いからよくわかる。
嬉しくなって思わず声をかけようとすると、七海くんに肩を掴まれ静止させられる。
『え?なに?今悟さんが…』
七「こっちから行こう…」
?「さとる〜♡♡」
え?今、なんて?
振り返ると、悟さんに抱きつく女性の姿。
遠くてもわかる。あれは絶対に悟さんだ。
嫌がるそぶりもせず、腕に絡みついたまま私に背を向けて歩き出す2人。見ていたから状況がわかるはずなのに、よくわからない。
陸「風海?ここにいたら危険だ。とりあえず高専に戻るよ?」
コクンと頷き、歌姫さんに手を引かれるまま歩いた。
歌姫さんが“あのクズッ”とか“最低!”とか言ってるのが聞こえたけど、まだ信じたくない気持ちでいっぱいだった。涙は人前では流せない。
でも、約束した日に来なかった。
連絡もなかった。
もしかして、私はもういらない?
気がついたら高専に着いていた。
少し安心して涙が一筋溢れた。
事務室に行き帰った報告をすると、とぼとぼと歩いて部屋に向かう。
歌姫さんが心配して傑さんに連絡をしてくれた。
部屋の前に立ってから気がついた。
もしここに悟さんが帰ってきたら?
何も知らないフリなんてできるかな?
泣いてしまう気がする。
『歌姫さん、今日お部屋に泊めてください』
歌「構わないけど…夏油は帰ってくるんじゃないの?」
『もし…悟さんが来てしまったら、私…』
歌「わかった。夏油が戻ってくるまでね?」
お部屋のドアが閉まった途端に溢れる涙。
玄関で泣き崩れる私に驚いただろう歌姫さんがティッシュを持ってきてくれた。
歌「とりあえず中入って?」
3月でもまだ寒い。
部屋が温まるまではしばらくかかると思うが、今はそれどころじゃない。
そしてそんな時に限って医務室からの呼び出し。
数名の負傷者が出たと。
硝子さんは京都に行ってるとのことで、私に白羽の矢が立った。
人魚姫だと発表してからは隠すことは無くなったので、助けられる人が増えたのは嬉しい。
今は涙流しっぱなしだから、すぐに治癒できそう。