第62章 ※遠い初めての夜

「………え……………、」


杏寿郎が訴えを聞いてくれなかった事に菫が戸惑っていると、杏寿郎は再び蕾を口に含む。


「あッ」


杏(ここは随分と弱いのだな。挿れた指が食われそうだ。)


「杏寿郎様…ッ」


様付けの期間が長すぎたせいか、菫は頭が蕩けてくると杏寿郎をそう呼んだ。

それがまた堪らない。


菫は快感が強過ぎて太腿で杏寿郎の頭を挟んだ。

するとそれはそれでふわふわの綺麗な髪がこそばゆい刺激をもたらす。


菫は足を閉じるのを諦めるのと同時に杏寿郎の頭を押さえながら海老反りになって一番激しく達した。


「はーッ、はーッ、」


菫が焦点の合わない瞳で息を乱していると、杏寿郎が愛おしむような瞳を向けながら口付ける。


杏「強引にしてすまなかった。だが、とても愛らしかったぞ。」


そう褒められると菫の頭は痺れ、夫に好きなように体を弄られ、その反応を愛でられる事こそが妻の喜びなのではないかと思った。