• テキストサイズ

【進撃の巨人】片翼のきみと

第1章 出会




瞳を輝かせてウキウキとするロイとは対照的に、私は冷めた笑顔が貼りつくのを感じた。その表情を見てか、ハルはわざと話題を変えた。



「そうでした、お嬢様。ご友人に差し上げたい、と仰っていた紅茶に合う焼き菓子、買っておきましたわ。」

「ああ!!ありがとう!!ちょうど今日、その子に会うつもりだったの!」



満面の笑みをハルに向けると、ハルは少し切なげな目で私を見た。



「朝食が済んだら出かけるわ!」

「えっ、姉さん、せっかくお父様が帰って来るのに…出かけてしまうの?」

「………どうしても外せない約束なの。昼食の時間には戻るわ。ハル、お父様には……」

「歌のお稽古……ですか?」



ハルは、はぁ、とため息をついた。



「さすがハルね!」



私は満面の笑みを向けた。

私はいつもの洋服よりも少し質素に見える無地の服を着て、いつもと変わりない朝食をとった。パンとスープにハム、そして紅茶。

母は食事を作るということをしなかったが、紅茶だけは毎朝私に淹れてくれた。私にとって紅茶は母の味だ。



「姉さん、よく飽きもせずに紅茶を飲むね。僕はあまり好きになれないよ。」



ロイはパンをほおばりながら、私の方をチラリと見た。彼はほとんど母の事を覚えていない。もうニ年も前。




彼が五歳になった頃に、母は出て行った。当時私は八歳、あの時のことは小さいながらに、今でもよく覚えている。

/ 3820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp