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あなたがたった一度の恋でした【鬼滅の刃】

第65章 炭治郎の強く訴える声が柱には届かない






ぼやけた視界にずらりと並ぶ足が映ると、炭治郎は弾かれたように顔を上げた。



「大人しくしていろよ。柱の前だ」



小さな声で隠がそう言いうが、自分を見下ろす人物達の好奇な眼差しに圧倒されていた炭治郎は聞こえていなかった。

誰かもわからない人たちから見下ろされるのは気分のいいものではない。

おまけに、禰豆子も伊之助や善逸の姿も見当たらない。

今自分が置かれている状況の把握すらできていないが、みんなの無事のほうが気になって炭治郎は仲間を探して辺りをキョロキョロと見回した。



「ここは鬼殺隊の本部です。あなたは今から裁判を受けるのですよ。竈門炭治郎くん」



そんな炭治郎に声をかけたのはしのぶだ。

彼女の姿を見た瞬間、炭治郎の脳裏にあの時の出来事が甦った。

那田蜘蛛山で禰豆子を殺そうとした女性隊員。

しのぶから逃がしてくれるために協力してくれた義勇や桜も無事なのだろうか。

炭治郎は、柱と呼ばれる人物たちの会話などどこ吹く風で辺りを見回し続けた。



(!!)



そして、派手な髪色と炎のような羽織をまとう炎柱・煉獄杏寿郎の正面に義勇の姿を見つけた。(桜の姿は、杏寿郎の背に隠されていてすぐには見つけることができなかった)



(よかった………)



義勇の姿にホッと息をはいた炭治郎は、鋭い視線を感じそちらを向いた。

刺すような眼光でジッと杏寿郎が見ていたのだ。

もともと目力のある杏寿郎だが、それ以上のものを瞳に感じた炭治郎は怯んだ。



(この少年が、桜が身を挺してまで庇ったという隊員か………だが桜はなぜ…………)



杏寿郎の探るような目から逃れたいのに、炭治郎は目をそらすことができない。

まるで、捕食獣にでも睨まれているようで、目の前に立つ“柱”と呼ばれる者たちの視線や言葉も決して穏やかなものではないが、杏寿郎は眼力だけでも凄みがあり炭治郎は身動きがとれなかった。







「そんなことよりも冨岡らはどうするのかね」

「!?」



突然、頭上から声がして炭治郎はようやく金縛りがとけたように見上げた。



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