第64章 私は自分の意思で隊律違反を犯しました
本部に到着すると柱合会議が行われるとあり、ほとんどの柱が集結していた。
義勇と桜が姿を見せると一斉に視線がそちらに集まる。
突き刺さるような冷たい視線を桜はその肌にヒシヒシと感じ、居心地の悪さに俯いた。
今回のことが知れ渡れば、その場がピリピリとした重苦しい雰囲気になることなど百も承知だったはずなのに。
実際にその空気を味わうのは、とんでもない重圧だった。
義勇は、彼らの視線に萎縮する桜を隠すように己の背中に隠す。
そこにーー、
「冨岡。お館様がお見えになる前におまえと話がしたいんだが」
ずんずんと歩み寄って来たのは他の誰でもない、杏寿郎だった。
柱たちは集合時に事のあらすじを簡潔に知らされていた。
鬼を連れた隊士というのも問題だが、柱が鬼を逃がしただけではなく、それを追おうとした隊士の邪魔をしたというのはそれ以上のものだった。
他の柱から反感を買わないわけはなかった。
おまけに継子である桜の名前まで出て、驚いたのは蜜璃と杏寿郎だ。
特に杏寿郎は真面目な桜が隊律違反など犯すはずもないと信じているため、なぜそうなったのか真意を義勇の口から聞きたかった。
杏寿郎の義勇を見据えるその目は、獲物を狙う鷹のように鋭い眼光を放っている。
「常に冷静沈着なおまえが隊律違反などと誤った行動に出たあげく、桜まで巻き込むとは、どういう了見だ?」
「………………」
今回の事に関して義勇に対し誰よりも腹を立てていた。
それは杏寿郎が桜のことを好きだからで、愛しいと想う彼女に義勇があのような表情をさせているからだ。