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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第16章 覚醒のトリガー


そういって目を閉じるハルカ。寝ているというんじゃなくて、ずっと何かを思い詰めるような…。

「うん。今は移動中で動けないから今のうちにじっくり考えておきな」
『……ありがとう』

目を開け、にこ、と笑ったハルカ。そのまま視線を窓の外へと移していた。
"……復讐したい。私の日常を壊して、恐怖で支配して道具として扱ったあいつらが私は許せない!"
彼女は確かな殺意を持って言った。呪力を一定のままにしてるつもりでも今まで見てきた彼女の中でもこれほどまでに感情が乱れているんだな、と新たな一面を見た。平穏に生きてきて、この世界に入ってもしかしたら初めて持った感情なのかもしれない。これまでにここまで物騒な感情を持ったハルカを僕は知らなかった。
注意すべきか。放っておくか。このよく見える眼には答えが見えている。この機会を逃したら次はどうなるか分からない。春日の血族ならではの体表をうっすら覆う呪力。それはハルカに出会うよりも以前にどこかで見たことがあったもの。どこで見たのか僕には思い出せないけれども、記憶の奥底で焼き付いている。
太陽のフレアのように時折しなってる、髪のような細い呪力がハルカの周囲でいつもちらついてる。もちろん、僕には影響は無くて呪いにだけ牙を向く小さな反抗(カウンター)
その呪力に明らかな変化が見えている。

今の彼女の白髪化は半分にも満たない。
僕に見える術式で今、判明しているものは攻撃的な呪術ではない方で不安要素はそう無いと思うんだけれど、なにやら普段とは違う春日の呪いがハルカを駆け巡っている。
きっとハルカは今、その物騒な感情とどう向き合うかを考えてる。綺麗なままの彼女でも充分であるけれど、その黒いモノを向き合って受け入れるのならばそれは成長する良い機会。
ハルカの望む、強さを手に入れるのは今なのかも知れない。

「大丈夫、でしょうか……」

声を潜めて龍太郎が言う。それに僕も声量を控えめにして答えた。

「大丈夫さ、彼女なりに戦ってるんだ。たっぷりと考えさせて今起こってる事件と向き合っていかなきゃね」
「……はい」
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