第6章 Episode:06*
「…これ、本当はピンキーリングって言って小指につける指輪なんだけどって指、細いから」
ほら、と野薔薇ちゃんが私の左手を取って薬指に指輪をはめてくれた。
「やっぱり、薬指にぴったりだった」
付け終わった野薔薇ちゃんがうん似合ってる、と満足気に微笑む。
けど、すぐに目線は私に戻されて。
「それとこの指輪には、私の個人的な願いも込めて」
「……?」
「が幸せになりますように」
まあ私が言うことじゃないけど、と野薔薇ちゃんは苦笑いを浮かべたけど。
私はというと、息をするのも忘れていた程だった。
心臓が撃ち抜かれて、止まる。
瞬きすら出来ない。
再度急速に込み上がってきた熱いものを、せき止めること、す、ら。
「……せ、……よ」
「ん?」
「もう、たくさん…幸せ…だ、よ」
ぼたぼたと零れ落ちてくる涙を拭うことよりも、指に付けているそのやさしさをぎゅうと握り締める。
苦しい。苦しい、よ。
*