第6章 Episode:06*
「さ、怪我したとこどこ?」
野薔薇ちゃんが救急箱を片手に、私にの隣に腰を下ろす。
箱の中には、消毒液と絆創膏、そして目薬や胃薬なんかの細々した薬がいくつか入っていた。
「気休め程度にしかならないかもしれないけど……取りあえず目立つとこだけ消毒するね」
「うん、…なんか、手慣れてるね」
「実習でよく怪我すんのよ」
「え!?そ、そうなんだ」
「まぁね。詳しくはまた今度話すわ。それより今は自分の心配をしなさい」
気になる私を他所に野薔薇ちゃんが、消毒液を含ませたガーゼを血が滲んでるであろう口元にそっと当てる。
堪らず身体がびくりと竦んだ。
「しみるでしょ?でも、ちょっと我慢して」
「っう、うん」
思わず顔面に力が入ってしまうのを感じながら、ぎゅっと目を閉じて刺すような痛みに堪える。
しばらくして消毒が終わり、口元や目元にペタペタと絆創膏を貼ってもらったところで、恐る恐る目を開けた。
すると。
「はい。よく頑張りました」
「………っ」
今までにない位の至近距離で、野薔薇ちゃんのとろけるような笑みを目の当たりにして。
心臓が、飛び出そうになった。
何だろう、何か変だ。
*