第6章 Episode:06*
自分の意思の弱さが情けなくて、目頭がじわりと熱くなるのを感じたその時――――。
「……本当、こんなに傷だらけになって」
「!」
静かな、野薔薇ちゃんの声。
音であることは確かなのに、その声は静寂そのものだといっても過言ではなかった。
彼女が、淡々と言葉を続ける。
「ボロボロ……痛かったわよね」
「……っ、ごめ………」
てっきりペンダントのことを言ってるんだと思って、泣きそうになりながらも再度謝罪の言葉を口にしようとする、と。
「……?」
ふわりと、何かに包まれたペンダントを乗せた方の手。触れたところから、じんわりとした熱が中まで伝わっていく。
野薔薇ちゃん、の、手の平だった。
「……守ってくれたんでしょ、これ」
「野薔薇ちゃ、ん…?」
「頑張ったわね」
格好いいじゃん、と。
腕を伸ばしてくしゃくしゃと頭を撫でてくれる野薔薇ちゃん。
殴打されたせいでよく開かない目で改め野薔薇ちゃんを見つめると、彼女はゆるりと微笑んでくれていて。
いつもの野薔薇ちゃん。
私の目を見て包み込むように笑ってくれる、私が大好きな、野薔薇ちゃん。
「………っ」
そんな野薔薇ちゃんに、遂に涙腺が決壊した。今まで必死に堪えてたのに、ぼろぼろぼろぼろ、溢れ出てくる涙が止まらない。
野薔薇ちゃんは何も知らないはずなのに――――。
“頑張ったね”
その言葉だけで、もう。
もう、充分だった。
*