第10章 玖 柱稽古
考え込んでいると廊下から話し声が聞こえた
「すいません、心の穴を塞ぐ薬を下さい…」
「俺もです」
「お願いします…辛くてこの先、生きていけない…」
「ここは心の病を治す場所じゃありません。帰ってください」
しのぶが門前払いをしていた
「あらあら、のせいで大変なことになってますね」
『私の?』
「…分からないのが一番罪なのよ?」
フフっとカナエに笑われた
にしても心の病なんてものがあるとは思わなかった
私の知らない病気がまだまだあるんだな
一度凍った肺も冨岡さんがここまで担いでくれたお陰で無事完治し、診察でも問題はなかったので、自身の屋敷へ戻った
今日は安静にとカナエに言われたが、昨夜の任務を思い返し自分の弱さに辟易し、素振りを行っていた
私は鬼をこの世から消すのだ
あんなことで死の淵に立たされることは許されない
『情けない…』
明日から鍛錬を倍にしよう…
夕餉と湯浴みを済ませ、布団に入った
目を閉じ眠りに付こうとするもなかなか寝付けなかった
そう言えばあの時いつもとは違う夢を見たな…
医者には理不尽に怒るも病弱な妹には優しく前を向くように語りかける兄の姿
夢なのにいつも現実味があって、まるで存在しているかのような世界だ
私はいつまであの夢を見続けるのだろうか
そして夢の答えは見つかるのだろうか…