第9章 捌 廉雪山
息を吹き返したは涙を流した
潤んだ瞳はあまりに美しく息を飲んだ
そして生きていることを確かめるように抱き締めた
「…お前まで俺を置いていってしまうのかと思った」
『…ごめんなさい』
「…許さん、このまま大人しくしていろ」
これまで何人もの命が俺の目の前から溢れ落ちていったか分からない
だがは生き延びて欲しかった、の一言でどれだけ救われた事か
そしてあの日からを他とは違った感情で見ていた
姉や親友とは違うこの感情に俺は戸惑っていた
『また抱き締めてくれる…?』
俺は耳を疑った
まさか同じことを思ってくれているのだろうか
だが図ったように隠が現れ、答えを聞くことは出来なかった
大人しく横抱きにされているに安堵し、この状況を堪能しながら蝶屋敷へ向かった