第9章 捌 廉雪山
『ねえ冨岡さん…』
「なんだ」
『また抱き締めてくれる?』
私は何を気持ち悪いことを言っているんだろうか、自分で言っておいて恥ずかしくなり顔が熱くなる
そして反応がない気まずさに負けて腕の中から離れた
『あの、今のは聞かなかったことにし…』
冨岡さんの顔を見るといつも半開きの目が見開いて身体は固まっていた
あれ、前もこんなことあったような…
『あの…冨岡さん?』
あまりにも固まる冨岡さんの目の前で手を振ってみた
すると手を掴まれた
「良いのか」
『えっ』
「雪柱様!」
声のする方へ顔をやると隠の人達が頂上へ到達したようだ
私は隠の人達に説明するため立ち上がろうとした
『あっ』
先程の型の疲労でふらつく私を冨岡さんが支えてくれた
すると足を掬われそのまま横抱きされた
「「「!!!」」」
「被害はない、此処にいる者を頼む」
「は、はひ!!」
そう隠に伝えるとそのまま下山しようと歩を進めた
『あの、冨岡さん…』
「何だ、歩けないのだろう」
にしてもこの運び方はどうなのだろうか
でもこの良い香りに包まれながら帰るのは少し嬉しいかも…とまた気持ち悪い事を考えてしまった
動けないことに変わりは無いので大人しく下山していった