第9章 捌 廉雪山
深く暗い
まるで海の底にいるかのようだった
身体は冷たく息苦しい
私を一人にしないで…
誰か私を見つけて…
『っ私を置いていかないで…』
「……っ、ぬな!!って、い!!」
もがく中誰かの声が聞こえる…すると視界に小さな光が見えた
『!』
すると誰かに背中を押され光が大きくなっていく
私はそれを必死に掴むよう手を伸ばした
目を開けると青い瞳が目の前に広がった
視界が少しぼやけている、また涙が溢れていたようだ
顔が遠ざかったと思えば腕の中に吸い込まれた
「っ!良かった…」
冨岡さんだ…抱き締めてくれてるお陰で暖かい
私は生きてると実感した
「…お前まで俺を置いていってしまうのかと思った」
『…ごめんなさい』
「…許さん、このまま大人しくしていろ」
そう言うと抱き締める力が強くなった
冨岡さんはとても良い香りがした
助ける為とは言え初めて男の人に接吻され、その上抱き締められている
(山の頂上で接吻を交わすと死ぬまで幸せに生きていけるのよ)
先程の女性の言葉が木霊する
真実は分からなくとも急に意識してしまった
私の心臓は急に五月蝿くなり必然的に肺は暖まっていった