第1章 はじまり
それからは動けなくなった父に変わって、私と母が仕事に出るようになった。働きに出たことのない私たちは毎日が必死だった。母はとりわけしんどそうに見えた。
働きに出ている間、父はひとりになる。ひとりの時間に呼吸筋の麻痺が来てしまわないか、ひとりで死んでしまうようなことがないか心配でならなかった。
あと1年の命なのにこのままでいいのか、私は悩んでいた。生活していくにはお金が必要だ。しかし、家族3人で過ごせる時間も刻一刻と減っているのだ。
父が医者に言った"今後は自分が後悔の無いように模索するだけ"
父は後悔しないのだろうか。考えて考えて、私は母に仕事を辞めさせた。一日中父のそばに居られるように。
母が決まって答えていた"そばに居たい"その気持ちを汲むために。
父が居なくなるのだ。私が母を支える。
父の様に母を支えていかなければ。