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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第1章 はじまり



父と母はお互いを大切にしあい、思いやりながら過ごしていた。
父は、多くを語らない母の言葉や気持ちを代弁するように支える。母は、誰からも頼られる父が一息つけるように穏やかに寄り添う。
似つかない性格の2人だけど、夫婦というものの理想の姿に違いなかった。



父の病気は突然だった。
突然と言っても病魔は足跡を潜めながら着実に父の体を蝕んでいたのだと思う。予兆はあったが父は私たちに黙っていた。心配をかけたくないという父の性格からだろう。
父は手足の指先の痺れを無視していた。痺れは良くならず、医者にかかるころには手足は自分の意思では動かせない状態だった。



医者は
「これは治療の仕様がない難病、というやつですな。簡単に言うと、頭からの命令と身体を動かす筋肉が上手く結びつかない状態。菌や毒などの類ではない。己の細胞の暴走、これに効く薬はない。
このような状態の患者を幾人か診てきたが、どの患者も最期は呼吸に使う筋肉も動かなくなり…残念だが…亡くなることになる。」


医者の言葉に母も私も言葉を失った。静寂の中で一番に口を開いたのは父だった。
「、、、わかりました、伝えづらいだろうに先生もありがとうございます。治療はないとなると今後は自分が後悔の無いように模索するだけですね。…ちなみに私はあとどのくらい生きられるのでしょうか?」
こんな時でも医者を気遣っている。父はどこまでいっても優しさを絶やさない。


「個人差はありますが、1年前後かと」


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