第2章 消えた雨粒
私は町に向かって走り出した。
「美雲ッ!!」
名前を呼ぶ童磨の声も届かなかった。
わき目も振らず町に向かって必死に走った。
母を、母を、
_____見捨てちゃいけない!!!
獣のようになった母の姿を見て、あれが”鬼”なのだと理解した。
どんな理由があったとしても、あの優しかった母があんな姿を望んでいたはずがない。
父の死を通して心を病んでしまい、私にひどい言葉をぶつけてきたが、それは母の本心ではない。病気のせいなのだ。
自分の意思ではどうにもできないものが病なのだと、父の姿を見て学んだだろう。私は本当の母を見失っていたのだ。
それなのに、私は母の言葉を真に受けて、家を飛びだした。私がそばにいなかったせいで、母は”鬼”になってしまった。
私が母を見捨ててしまったから、守れなかった。父とも約束していたのに。
悔いても悔いても時間は戻ってこない。
今は一刻でも早く、母のもとへ行きたかった。
もっと速く、もっと速く、、、
足の筋肉に意識を込める。母から逃げたときとはくらべものにならないほどの速さで足が動いた。
(お母さん、今行くからね)