第10章 圧倒的な力
林の中をすごい速さで駆け抜けていく。走る時の振動が肩に響き、痛みが走る。
担がれる格好なので、腕の重さが余計に肩に掛かっていた。我慢するが少し呻きが漏れる。
その声を聞いて不死川は足を止めた。肩から美雲を下ろす。既に足は力が入らない為、下ろされると同時に立つことが出来ずに崩れた。それを難なく支える。ギョロリとした目が美雲を見た。
「…チッ。面倒くせぇ奴だなァ。痛いなら痛いって言えェ。」
不死川は美雲を抱き上げる。今度は担ぐのではなく、美雲の体を両手で包みこむように抱える。
密着する身体、近くに見える顔にどきりとする。助けてもらってるのに何考えてるんだと自分を毒づく。
抱えられると肩の負担はほとんどなくなった。
肩のことを安心するのも束の間。刻一刻と今も毒は巡っている。身体の感覚が段々と鈍くなる。呼吸も浅くなっていると分かる。
遠のく感覚の中で、近くにある温もりだけはしっかりと感じていた。
美雲は目を閉じる。眠りにつくように意識を失った。