第10章 圧倒的な力
美雲は刀を構えたが、すぐに視界がぐらつく。
失血で意識が遠のく。爆発で辺りに蔓延した毒も吸ってしまったのかもしれない。フーフーと必死に呼吸を繰り返し、その場に踏ん張る。
立っているのがやっとで、技を出す体力など既になかった。
回復した鬼が美雲に近づいてくる。
これが十二鬼月でもない鬼の強さなのかと立ち尽くす。刃が立たない。
鬼が来るのに動かない身体。自分の弱さが憎い。守りたいものも守れないままだ。
美雲は立ち尽くす。死を覚悟した。
_____その時。
突然突風が吹き荒れる。砂埃が舞う。
風とともに美雲の前に人影が現れる。白く短い羽織をはためかせ、その背中には"殺"の大きな文字。
現れた男が白眼がちな目を美雲に向ける。その顔を見て驚く。現れたのは風柱の不死川実弥だった。
「…生き残ってんのはお前だけかァ?」
美雲は小さく頷いた。不死川はすぐ視線を鬼に戻す。
「肩の傷の止血が甘ェ。邪魔にならねぇ所で休んでろォ。」
戦いの邪魔になってはいけないと美雲は足を引きずりながら、その場を離れた。
「好き勝手やってくれたなァ。言い残す事はあるかァ?」
不死川は鬼に向けて話す。返答を待つ事なく走り出す。
(すごい速さっ!!)
美雲は息を飲む。目で追うので必死だった。柱の戦いは富岡さん以外見たことがない。圧倒的な強さを放っていた。