第10章 圧倒的な力
前を歩く同期が振り返らずに言う。
「…いつもそうやってにこにこしとけば可愛いのにな。」
「してるよ。」
「してねぇよ(笑)いつも無表情で淡々と鬼を斬ってる。堅物だと思ってた。」
「堅物って…失礼な(笑)」
同期でもほとんど会話をしたことは無かった。任務以外で会うこともない。初めてゆっくりと言葉を交わす。
「お前ももっと他の隊士と関わったほうがいいぜ。合同任務だってそのほうが連携がとりやすい。」
「…そうだね。気を付ける。」
彼のいうことは一理ある。同じ鬼殺隊士であり、戦う目的も同じなのだ。協力しあうことは必要だ。
しかし、死が隣り合うこの世界では仲間を持つことは支えに
なるが負担にもなりうる。つい、失う怖さを考えてしまう。
いつの間にか廊下で立ち止まっていた美雲の手を、彼が掴む。
「ほら。」
手を引き、襖を開く。どこかで聞こえていた隊士たちの声が大きくなる。
「おお!#NAME2#さん!今日は助かったよ~!」
「ご飯冷めちゃいますよ!」
「このご飯うま~ッ」
次々と声が飛びかう。美雲はその輪の中に迎えられた。
周囲の隊士といろいろな話をする。各地で鬼と戦った話や自分の故郷など様々だ。
和気あいあいとした空間に初めはなかなか馴染めなかったが、周囲の雰囲気に導かれるように徐々に溶け込んでいった。
食事の後、皆で布団を並べて眠りについた。
苦楽を共にする仲間がいるのもいいなと思った。