第16章 続・夏祭り
神社を出てからというもの、の手を引き黙って歩き続ける杏寿郎に動揺し、の酔いもほとんど醒めていた。
明らかに怒っている。
不死川との事だとわかってはいても、元は杏寿郎が、とも引っ込みがつかなくなってしまっていた。
暫くして2人の背後から、ドンッ、という花火の音が聞こえ、驚いてつい足を止めてしまう。
「あ、花火…」
「………」
打ち上がった花火を見たのも束の間、再度手を引かれてまた歩き出す。
ただ、さっきまでは家の方向に向かっていたはずが、それとは別の方向に進み出した。
「杏寿郎さん?どこへ行くの?」
「…もうすぐだ」
有無を言わせない雰囲気にも黙り、着いて行く。
楽しみにしていたお祭りなのに、喧嘩して、花火も見れなくて、ただただ悲しくなった。
程なくして着いた先は、昼間なら多くの子供が遊んでいるであろう一般的な公園。
いくつか点在する遊具の奥に林に囲まれた小高い丘があり、杏寿郎はそこへ向かっていた。
杏寿郎にただただ着いて行くだけのは、いつしか下を向きながら歩いており、公園に入った事も、目的地に着いた事も気づいておらず、立ち止まった杏寿郎の背にぶつかってしまった。
「っ、ごめんなさい!」
そう言いながら杏寿郎を見上げると、そこには杏寿郎の後頭部と、大輪の花火が打ち上がっていた。
「…綺麗…」
その丘の頂上はぽっかりと空が抜けており、まるで絵画かの様に花火が美しく咲き乱れていた。
「」
杏寿郎が振り向いたと同時に胸に抱き込まれ、苦しいくらいに抱きしめられる。
「俺は今猛烈に苛立っている」
「…っ、わたしだって怒ってます」
離れようとグッ、と杏寿郎の胸を押すもビクともしない。
「ただし、隙を見せるにも、不甲斐ない自分にも、だ」
「…自分に、も?」
その言葉に胸を押す力が緩む。
の怒りは完全に嫉妬からくるもので、杏寿郎もまた同じであるはずなのに、杏寿郎自身にも苛立っていると言う。