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マイハート・ハード・ピンチ

第11章 素敵はばたき恋の歌


「はぁ…はぁ…なんでカラオケ行くのにこんな全力疾走しなきゃいけねーんだよ」
息を荒くした嵐が非難の眼差しを新名に向けると、
「なははー、なんか正気になると誰かと手を繋いで歩くなんて幼稚園ぶりだってことに気づいちゃってさー」
新名は恥ずかしそうに頭を掻いている。
「でもなんだかんだ、楽しかったかも!」
翠は無邪気に瞳を輝かせる。それを見た二人は顔を赤くしてそれぞれ視線を宙に泳がせた。

「じゃ、中はいろーぜ」
嵐が受付を指差す。店の自動ドアをくぐると、冷房の効いた店内のひんやりした空気が火照った体に心地よい。
「ああ〜、店ん中って天国だな〜」
新名もTシャツをパタパタさせながら気持ちよさそうに目を細めている。
こんな真夏の太陽の下、わけもなく全力疾走した後である。三人は汗もかいていたし喉も乾いていた。
「俺、ドリンクバー、ジンジャーエールにしよ!翠さん何にすんの?」
「ええ〜っと、カルピスソーダかなぁ」
「相変わらず甘いもん好きだよな、お前。俺コーラにしよ」
「嵐だって甘い飲み物でしょ?!」
三人はワイワイはしゃぎながら飲み物を用意すると、指定された部屋に向かった。
「うっひょー!ミラーボールとステージ付きの部屋じゃん!俺らツイてる!」
部屋を見るなり新名は盛り上がるが、嵐は「そんなに嬉しいか?それ」とキョトンとしている。

「うわぁ…カラオケなんていつぶりかなぁ!歌いたい曲ありすぎて、何歌うか迷うよ〜!」
翠が曲を調べていると、すかさず新名も、
「本当に!部活ばっかでこんなに遊んだの久しぶりじゃん?俺も気合入れて歌っちゃうよ!」
と言って真剣に予約用の端末を見つめている。
「おい、お前らまだ決まんないなら、俺さきに入れていいか?」
さっさと曲を選んだ嵐が退屈そうに二人を見ている。翠と新名はちょっと意外そうに顔を見合わせた。
「嵐って何歌うんだろう?」
「嵐さんが歌ってるとこ、俺みたことないかもしんない」
そんな様子を見て、嵐は「失礼だな。俺だって歌うときは歌うんだよ」と不貞腐れている。
それを見たニーナが、
「いやいや、大変失礼いたしました。ぜひ、お入れください」
と恭しくお辞儀した。嵐は「しょうがねえな」と言いながらも曲を送信する。
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