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マイハート・ハード・ピンチ

第11章 素敵はばたき恋の歌


「…ハァ、やっと巻いたみたいだな」
息を弾ませながら、嵐が後ろを振り返り確認しつつ、少しずつ走る速度を下げていく。
「あーー、まったくもう、せっかく楽しんでたのにい」
新名は悔しそうにジタバタしている。
翠はそこそこ怖い思いをしていたので、ちょっと青い顔をして「はぁ…逃げられてよかった…」とつぶやいている。
そんな彼女を見るなり、新名が「翠さん大丈夫?今日はもう切り上げとく?」と訊いてくる。
翠はハッとして、「せっかくの夏休み最後のお出かけなのに、水を差されて終わるのは悲しいな…」と、訂正すると、新名はニヤリと微笑み、「じゃあ、気を取り直して、三人でカラオケでも行きます?」と提案した。
嵐は「二人が行きてえなら何処でも」と笑っている。翠も、「そうしよう!」と元気よくうなずいた。

「あ、じゃあさ、翠さん、左手貸して」
新名が振り向いて手を差し伸べる。
「…え?」
翠は突然の新名の言動の意図が掴めず固まっている。
「手ェ繋ぐの!ホラ、早く!」
急かす新名に、嵐がムッとした表情で「何どさくさに紛れてこいつと手を繋ごうとしてんだ?」と訊いている。
「嵐さんも繋ぐんすよ!翠さんの右手!」
「…え?」
こうしてなぜか3人は仲良く手を繋いで歩くことになった。
「新名、どうしたの?突然」
翠が不思議そうに尋ねると、「ふへへ」と鼻をかきながら、
「だって、こうしてれば、さっきみたいな奴らに会っても俺らで翠さんを守れるっしょ?」
と、不敵な顔で笑った。
嵐も「そうかもしれねえな」と真面目な表情でうなずいた。
「じゃ、そうと決まれば。…カラオケまで、ダーッッシュ!!!!!」
そう言ってニーナが走り出す。「ちょ、ちょっとぉ!」翠と嵐は引きずられるようにして走りはじめ、結局三人で手を繋いだまま街中を疾走してしまった。
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