• テキストサイズ

【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第3章 3分の1でも選ぶとは限らない



 定位置について、水田さんが投げるタイミングを見計らう。ボールを引いたと同時に足を踏み踏み込んだ。普通ならすぐに飛び出してくるボールをいつまで経っても投げようとしない水田さん、身体が傾いて大きく足を一歩前に出してよろけた。

「ちょちょ、何してんねん急に止まって」
「治くん」

―――は?

 ネット越しに、水田さんの視線の先を見る。治や。嘘やん、治が体育館に来るなんてそうそうないで。

「なんや、なんで水田さんがいるん?」

 目を見開いて、治が言う。そりゃそうやろ、水田さんが本来体育館にいるわけがないんやから。俺は短く、切るように息を吐いた。
 邪魔が入ったな。それにあのよさこい、クラスの後片付けが終わって周辺のゴミ拾いをしてる時に見た。治が水田さんの腕引いて歩いてるとこも。
 気になるなぁ、何があったねん。問いただしても「なんもあらへんよ。目にゴミが入って公園で洗ったんや」の一点張り。アホか嘘つけ。今どき目にゴミが入って公園の水道で洗うわけないやん。不衛生すぎやろ。まさか、デキたんちゃうか? 水田の弟に聞いたらアホみたいに「絶対ない」って言うとったけど、可能性はゼロやない。

 でも―――これで確信が付いたわ。
 生まれた時からずっと一緒におるんや、何となくでわかるで。

「侑くんに、渡すものがあってさ。ついでに練習に付き合ってた」
「ふーん、珍しいこともあるもんやな」

 治がわざとらしく口にしながら水田さんから俺に視線を移した。それに疑問を抱きながら、水田さんも俺の方に視線を送る。

/ 89ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp