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【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第3章 3分の1でも選ぶとは限らない



 なに繋がりか知らんけどたまに他のクラスの女子と話してるの見かけるけど、猫被って話とる訳やない、と思う。あれは水田さんの素の笑い方や。この前伊藤(担任)に呼び出されて職員室にいた時の愛想笑いとは全然違う。違いすぎるで。心の中の声が顔に出すぎやあれは。伊藤が鈍感なだけやねん。
 この前たまたまクラスを通った時に、クラスの女子と一緒にお菓子食べて雑談してるのも見たし、そういえばひとりで弁当食べてるところも見たことない。

(っていうか、俺見すぎやろ。めちゃくちゃきもいやん............)

 自分の無意識な思考回路に顔を引きつらせながら、トス練で体育館に散らかったボールを二人で集めながら横目で水田さんを直視する。
 わざとらしく動きを止めていると、近くまでボールを拾いに来た水田さんが見られているのに気付いた。一旦後ろを振り返って、見られているのが自分であることを確認すると、無言で片手で顔を隠し固定しながら何事もなかったかのようにボール拾いを再開する。思わず「なんやねん」とツッコむと、オウム返しで「なんやねんはこっちのセリフや」と、俺を真似た言葉で返って来る。なんや、えらい使いこなせてるやんけ。

「そういえば、もうすぐ春高? だよね。一月四日だよね」
「一月八日な」
「はい、一月八日ね。すいませんでした」

 弟見に行く言うとったけど実際どうなん?と聞けばやつれた顔で、待って聞いてないよ⁉ と声を張り上げた。親に押し付ければ。と言ってみれば、「いや、大体私に言ってくるパターンはお母さんに断られて連れてって欲しいって意味だと思う」と耐えがたい現実を悔しそうに絞り出す。

「じゃあおねぇちゃんの出番やな」

 水田さんを励ましたつもりが、段々虚ろな目になって来る。あかん、めちゃくちゃ地雷踏んだかもしれん。「いいからはよ投げてや」と練習を再開すると、わかりやすく背すじを伸ばして投げるぞ! と言わんばかりのアイコンタクトを俺に送って来る。

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