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【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第1章 喧嘩止めたら殴られた。





 湿布だからスース―するのは当たり前だけど、それよりも常に湿布の匂いがして落ち着かない。やっぱり姉という身分を捨ててでも湿布を肌色に塗っておくべきだった。
 それに、頬に湿布とかあまり需要性はなさそうだけど、これでも私は一応女の子の分類だ。顔に傷は残したくないし早く治って欲しいとももちろん思う。

 マスクでもしようと思ったが時すでに遅く、思いついたのはついさっき。たった今。今さっき廊下歩いてた時に思い出した。この歩き方もしかして体に良かったりするのかな。ただでさえ使うところがないのに一体なんの為に脳みそ付いているんだ。思わず自分を殴ったよね、湿布のない方を。もう考えるだけで絶望する。

 唯一救いなのは私がショートヘアじゃなかったことだ。それも今も丁度現在進行形で活躍している。活躍しているはずなのに、髪の毛でうまく隠しているつもりなのに、それなのにさっきからなぜか廊下の視線がまるで拳銃だ。あれ、日本って銃所持するの禁止じゃなかったっけ。

 しょっぱなからこのざまだ、これは教室に入っても廊下にいても生き地獄に間違いない。でも、これに比べたら大勢の人に見られるより、知ってる特定の人に見られる方がまだマシかもしれない。言い訳だって聞いてくれるわけだし。

 そう思い私は背筋を伸ばしてそそくさと教室へ向かい教室の後側の戸を開けた。すでに戸の近くにいたクラスの女子達が戸の音に気付いていつものように「愛ちゃんおはよう」と声をかけてくれる。

 私もそこまで馬鹿じゃない。
 今後の為を考えてちゃんとクラスの皆全員とはコミュニケーションは取れる。孤立しているわけでもない。私が言うのも説得力ないけどコミュニケーションは大切だし、学生時代の友達は大切にした方がいい。

 そんな思考とは裏腹に、私は顔をさりげなく隠しながら「おはよう」と女の子達に返すが自分でもビックリするほど小さな声しか出ず、私の脳細胞は確実に心の悲痛と共鳴し今にでもオーケストラが始まりそうな勢いだ。
 一刻もはやく自分の机にと足早に向かうと自分と近くの席だった一人の女の子が「えっ、」と声を上げ、思わずビクッと肩を震わせた。


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