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ゼルダの伝説 時を超えて

第1章 第一章



彼にしがみついて通った城下町は昨日と違い静寂に包まれていた。
冷たい空気と風の音、そのなかで響くのは硬い道を踏み締める馬の蹄。揺れるたびに擦れる互いの衣服の音。

静寂に耐えきれず私は言葉を発した。

「天下る何処かに黄金の力あり。触れそめし者の望み……」
「神に届かん」

私が最後の言葉を発するよりも早く彼が答えた。

「…やっぱり有名な伝説なんだ」

彼は答えなかった。

「ときどきね、私の村に来るハイラルの行商人たちが教えてくれたの。古の時代から、今も尚、血眼になって探す人が沢山いるんだって」

彼は私に答えることはなかった。

「子供のときはいいなぁって思ってたの。でも…」

視線を外に向けた。ハイラル城下町の景観は美しく整えられ、輝きに満ち溢れている。だが、未だに修繕されていない場所、残された其の傷跡は…。

「ガノンドロフは…」

彼は静かに言葉を紡いだ。

「結局、トライフォースを見つけることはできなかった」
「そう、ね」
「それを全ての答えにするべきだと、姫はいう」

私は答えず、彼の言葉を待った。

「でも、それで終わらないことを、《俺たち》は知っている」

彼は此方を見ずに真っ直ぐ前を見つめている。私も彼の顔を見ることはできなかった。

「ガノンドロフは、王の謀殺を企て、失敗した。賢者達の力によって封印されたというが、必ずヤツは戻ってくる」

まるで、ガノンドロフに会ったことがあるような口ぶり。だけど、彼があの石版を見たことがあるのなら、あの文字を読めたのならば、納得はできた。

ハイラルの使者が持ち込んだある石版。古代ハイリアの文字が刻まれた其れの内容は神託。女神ハイリアからのお告げだった。
古の時代に黄金の力…即ちトライフォースを巡って女神ハイリアは終焉の者と呼ばれる、恐ろしい魔王と戦った。長い時を経て、女神ハイリアが滅したと語り継がれているが…事実上はそうではない、と石版は私たちにいう。

“悪しき心を持つ者の目覚め。其れは必ず訪れる。《私》が封印することしかできなかったように、何れ来たるその時も彼を完全に滅することはできないだろう。必要なのは“緑の衣に選ばれし勇者”と“鍛えられし退魔の剣”。揃うまで事は輪廻する…“

ガノンドロフが謀反を企てたとき、勇者も退魔の剣も現れることはなかった。
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