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ゼルダの伝説 時を超えて

第1章 第一章


大きな青い瞳が目の前に現れてときめいたのも束の間。悲鳴も出ないほど早く流れていく景色のなかで私は反射的に彼の服をギュッと掴んでしがみつく。

目を閉じ激しい揺れに耐えてみる。馬車に乗っているときも野盗に遭ったときなどは馬を走らせたけれど、その比じゃないほど怖い。二人用の鞍にしてあるのは座っただけでわかったが、それでも不安定な場所に座っているのは違いない。
一歩間違えれば振り落とされる。馬に初めて乗るのかとわざわざ聞いたくせにこんなにも早く走るのはおかしいじゃないかと余裕のない頭で文句を垂れた。

しかし、それは長く続くことはなく、ゆっくりと馬は止まった。

「さすがに城下町は走れないか…」

ハイラル城には二つの城門がある。ひとつは先ほど通ってきた城本体の真ん前にある大きな城門。そしてもうひとつがその門から一本道を下った先にある城下町をもぐるりと囲う大きな城壁。その唯一の出入口を開閉する橋そのものが門だ。昨日、ハイラル城に来た際、大きな橋が門にもなるのだと知って驚いたのでよく覚えている。

門から城までは一本道。その橋を通るには必ず城下町を通って行かなければならない。流石に城下町のなかを全速力で走るほど彼は酷い人ではなかった。

(よかった…ずっとあのスピードで揺られてたら死ぬところだった)

ほっと胸を撫で下ろして景色を見ようとする。そこで私はハッとした。あれ、私、今、何に顔を突っ込んで、何にしがみついているんだろう。

「わ、わ、わー!!」

慌てて彼から手を離した。そのまま仰け反ってしまったのでバランスを崩す。ゆっくり歩いているとはいえ馬の背、地面に叩きつけられると覚悟したとき、彼がグイッと片腕で私の腰を掴みグイッとそのまま引き寄せた。

「危ないから暴れないで」
「…す、すみません」

冷静な対応に火が出るほど顔が赤くなっていくのを感じる。再度、密着した彼から太陽に干された服の匂いと男の人独特の匂いが混じり込んで、それが私の脳内を麻痺させていく。
彼から感じる僅かな体温がまた私の熱を上昇させた。

(やばい。走っているときの方がマシだったんじゃないの)

馬の揺れに耐える為、しがみついているしかないこの状況。足も長い彼だが、座高も私より高いのは今の私にとって唯一の救いだった。彼の胸に顔を埋めていれば真っ赤なこの顔を見られなくて済むだろうから。
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