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ゼルダの伝説 時を超えて

第1章 第一章



「くくっ……そんなに緊張しなくても」

陶器でできたお人形のような顔をくしゃりと曲げ、笑う姿は無邪気な少年の姿にも見える。神様はこの人のことを愛しすぎているんじゃないかと疑うほどイケメンだ。

「いや、あの、緊張、っていうか、あの」
「マーロンからハイラルに来たのは初めて?」
「え、あ、はい」
「随分、昔にマーロン国へ行ったことがあるよ。広い海と活気のある街が賑やかな美しい場所だった」

深い蒼の瞳を細めて笑うその姿に胸が苦しくなる。
こういった感情を持ったことはない。愛や恋やとなかったわけじゃないが、ここまで苦しくなるのは人生が初めてだ。一目惚れ?…そんな馬鹿な。どれだけイケメンであろうとも会ったばかりの人にそう想うのは……。

「…だから、これを持って欲しい」
「へ?」

突然投げ渡された其れを反射的に受け取る。落としそうになったが、なんとか左手が握り締めた。見惚れていて話を聞いていなかったらしい。やらかした。

「え、これ…」
「短剣。俺一人で護ろうとしても限界がある。何かあったときにせめて自分の身くらい衛れる物がないと」
「あ、なるほど」

どうやら彼はこれから行く場所が危険だという話をしていたらしい。

「スカイ、さんは森の神殿に、何度か……?」
「……俺については何も聞いていないのか」
「えっと、あの、実は突然此処に連れてこられたも同然で…」
「あいつら…とりあえず城門に向かおう。その間に俺の《仕事》について説明するよ」

彼は私の横を通り、クイッと首で行く先を示し、そのまま進んでいった。私は遅れないように慌ててついていく。彼は長い足でスタスタと歩いてしまうので、少し早足でないとスピードを合わせることができない。

「森の神殿へ行くには迷いの森というハイラル人が行けば二度と帰ってこれない、そんな危ない場所を通って行かなきゃいけない」
「え」
「その迷いの森へ行くにも、コキリ族が住む集落を通っていかなきゃいけなくて…本来はコキリ族を護る為に森の長が結界を張り、ハイラル人は入れないようにしてある」
「えと、じゃあ、どうやって其処に…」
「俺の仕事はコキリ族とハイラル人を繋ぐこと」
「《繋ぐ》……」

後ろ姿だけの彼がどんな表情をしているかなんて私にはわからない。

「森の神殿に行くのが必要な人を案内し、悪意のある者は追い払う。
それが俺の仕事」
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