第1章 第一章
私は空を飛んだ。間違いなく。
「腰を掴んでたから安定感があったはずなんだけど…」
「そういうことじゃない!!!」
「もっとがっしり掴んでおけば…」
「そういうことでもない!!!!!」
彼曰く、森の神殿の入り口は森の賢者サリアちゃんと喋っていたあの場所から見上げた場所にあったようで、行くにはフックショットを使う以外の方法がないのだという
だけど、私を連れて行かなければいけないから、二人で行くにはどうしたらと一人で悩んだ結果、腰を掴んで俵持ちしたと言うのだ。
解せぬ。
入り口に行くにはその方法しかなかったということはわかりたいし、結局そうなったこともわかる。でも、前もって説明することはできなかったのだろうか。
「ところで、森の神殿の祭壇のところに石碑はあるんでしょう?」
「え?」
「え?いや、だって神殿って言えば祭壇があって、祀る神がいて…ん?」
「いや、森の神殿に祭壇はない」
「神殿とは」
「…いや、実際はあったのかもしれないが、何のために使われたのかわからないような部屋ばかりで」
彼は顎に手を当てて考え込む仕草をする。
「それって、神殿内が広い、っていうことですか?」
「ああ、二日で回れればいいけど…魔物の数が多ければそれだけ…」
異議あり。
「ちょっと待ってください。二日ってなんですか」
「え?この神殿内にいる日数だけど」
「聞いてません!お風呂は!?」
「途中で水場があったっけな…」
「着替えは!?」
「たぶん、着替えてる余裕なんてないと思うけど…」
さっきから右に左に新ニュースが飛び交っててわけがわからない。菩薩のような広い心の私もそろそろブチ切れそうだ。突然私の案内を任せられたスカイさんより、私はゼルダ姫に物申したい。
どうして私に色んなことを教えずに旅立たせたの!!!!!
「まあ、大丈夫さ。二日くらい一瞬で過ぎ去るよ」
「睡眠は…」
「安心して寝れる場所があったらな」
ゼルダ姫。一生恨みますからね。
「とにかく、迷いの森と同じく俺から離れないでくれ」
「はい」
「離れたら守れる保証はないからな」
「わかってます」
マーロンに生きて帰れたら、高いからと買わなかった服や食べたかった物、飲みたかったお酒、全部買おう。ツケは全部ハイラル城で。
「さあ、行こう。森の神殿へ」
私は大きく頷き息を吸い込む。深い森が嗤う様に葉を揺らした。