第1章 第一章
猪野郎たちの屍を超えて、真っ直ぐと向かった場所。
聞こえていたオカリナの音、大きな切り株に座る少女。
「待ってたヨ」
森に愛された緑の髪と緑の瞳を持つ少女。
「……久しぶり、サリア」
「その子が、言っていた子ネ?」
「ああ」
「こんにちは。はじめましてサン」
「は、はじめまして」
マーロンやハイリアとも違う独特の訛り。
「迷わなかった?」
「ミドが案内してくれたから」
「そう。よかっタ」
先ほどの少女たちは子供たちと戯れているという感覚に近かったが、彼女は違う。コキリ族に会っている。まさにその表現に尽きる。
私よりずっと子供に見えるのに、目の前にいる彼よりも大人びている少女。
「気をつけてネ、ココは迷いやすいから」
ニッコリと笑う彼女。間違いなく、彼女こそ森の賢者だろう。
言われなくとも女の勘が騒いでた。
「サリア、森の神殿にも魔物が…」
「やっぱり…そうなのネ」
「詳しく調べるには森の神殿の中にある何かを探さなきゃいけないんだ。何か、心当たりはあるか?」
「あるヨ。でもそれは私より…」
彼女は笑顔を崩さない。
「リンク、貴方の方が知ってるんじゃないの?」
リンク?一体誰のこと、なんて視線を辿った先にいた彼。
「…俺はリンクじゃないよ」
「……さぁ、どうかしら」
彼を誰かと間違えているってこと…?
「あの、森の賢者さん」
「ワタシのこと?」
「あ、えと、違いました?」
「……ううん、合ってるヨ。でも、ハイリア人がそう言うなんて変だと思って」
「え?」
「そうでしょう?森の神殿に決められたのはワタシなのに、ハイラル人が決めた賢者は別の人だった」
「え!?」
彼が答えてくれるのではと視線を投げかけたが彼は視線を逸らすだけ。
「…サリア、とにかく俺達は森の神殿に入るよ」
「気をつけてネ」
「ああ」
「うろこも」
「え!?私の名前…」
「森は貴方に興味津々ヨ。リンク、しっかり見てあげて」
突然の莫大な情報量にパニック状態の私を置いて、彼は先ほど持っていた不思議な武器を装着する。なぜ、みんな私を置いて会話してしまうんだ。誰か私に今の状況を細かく説明してくれ。
「じゃあ、行くよ」
「いってらっしゃい」
目を閉じてうんうん唸っていたら、腰のあたりをギュッと抱きしめられた。ぎょっとして目を開けたのがいけなかった。
「いやああああ!」