第1章 第一章
「こっちだ!」
「ああ」
なぜ、迷いの森と呼ばれているのか来て初めてわかった気がする。いくら歩いても歩いても同じ景色が広がっているのだ。
大抵は木の大きさや枝の伸び方などで現在地がわかると登山化達はいうけれど、些細な違いさえ見つけられないほどに全てが同じに見えた。
「サリア、きっとスカイが来たって言ったら喜ぶぜ」
「そうかな」
「ああ!最近は奥に行ってそのまま帰ってこねぇから、心配してたんだ。きっとスカイが来たら元気出て帰ってくるさ」
同じ世界をぐるぐると歩いているように錯覚するが、不思議と森の神殿に近づいていることだけはわかっていた。それは、森に木霊するオカリナの音が段々と近づいてきているから。
その音がハッキリと聞き取れるようになった頃だ。
「…俺が案内できるのはここまで。ここから先は行けるよな」
突然の別れが来る。
「ミドくんとはここでお別れ…?」
「ここから先はサリアしか行けないんだ。だから俺、他の人が入ってこれないようにここで見張っててやるよ!」
「ああ、すぐ戻ってくるから」
「おぅ!!」
笑顔で手を振る彼を置いていくなんて…とスカイの方を見たが、彼は迷わず背を向けて進んでいった。置いてかれぬよう少しだけ手を振って慌てて彼に走ってついていった。
「小さな子供一人だけ置いていくの?」
「小さな?」
「迷いの森は危険なんでしょう?彼は…迷わないみたいだったけど、それでも…」
「ミドが何年生きてると思う?」
「え?」
突然の質問に呼吸を忘れる。
何年?見た目からして6歳くらいだろうか、いや、それよりも小さく感じる。しっかりしているから大人っぽく見えるけれど…。なんて、全部間違い。
「俺と同じくらい生きてるよ。確実に」
「うそ…」
「ほんと」
「そんなふうには…」
「狂ってるだろう?コキリ族は」
振り返った先は闇が広がっていた。もう、ミドの姿を目で確認することはできない。もう一度前を見た先でこちらを見ていた彼の瞳は、迷いの森の影に覆われてより一層、暗く見えた。
「彼らに寿命があるのか、100年経てば成長するのか、誰も知らない。彼らの少しはとても長い時だし、ハイリア人の俺とマーロン人の君とは大きく違うんだ」
違う、そう言い切った彼は私から視線を外すように地面を見つめた。
そんな彼を見つめているのはとても苦しくて…。
「スカイ…」