第1章 第一章
食べ終わると軽く片付けをして扉の向こうへといく。
開けたその場所で彼は愛馬と何か言葉を交わしていた。
遠くから見てもイケメンとは…彼の造形はどうなっているのだろう。
神様は彼のことをよっぽど愛しているに違いない。そうでなければ世の男たちはもっと美形だったに違いないから。
「来たか」
「ごちそうさまでした」
「別に」
「ココからは徒歩ですよね?」
「ああ」
早朝出掛けたにも関わらず、あっという間に日は西に傾きかけていた。目を凝らしても見えないハイラル城を探しては本当に遠くへ冒険に来たのだと実感が湧く。
「コキリ族は警戒心が強いから気をつけてくれ」
「わかりました」
私の住んでいるマーロンはヒト族しかいない。古き時代には海の神に愛された魚人族なんてものがいたらしいが、それも伝承となって真実は迷宮入りしていた。
そんな平凡国マーロンとは違い様々な種族が暮らすハイラル王国。初めて出会う「人」とは違う生き物。不安もあったが、それ以上に期待が勝っていた。
「コキリ族って本当に子供だけなんですか?」
「ああ」
「どんな家に住んでいるんだろう」
「普通だよ」
「スカイさんはいつも見てるからそう思えるんですよ」
「どうだろう。ゴロン族やゾーラ族より普通だとは思う」
「そうかなぁ…」
ゴロン族やゾーラ族にも冒険の途中で会えたりするだろうか。名前からは想像しにくいが、ゴロン族は岩のような、ゾーラ族は魚のような姿をしていると聞いている。写生された絵を見たこともあるが、そんな生き物がいるわけないと思っている。この目で見なければ信用しない!
「っていうか、あのさ」
「はい」
「敬語になったり、タメ口になったり、どっちなワケ?」
「え?」
今までに色々とありすぎてタメ口になったりしていただろうか。マーロン国…いや、私が住んでいる地域では敬語やタメ口のルールが曖昧だった。過剰に反応する人もいたが、ほとんどがゆるーくかるーくで…。
「すみません。私、あの」
咄嗟に言い訳を考えたのに。
「敬語とか嫌いなんだ。堅っ苦しくて嫌になる」
「え…っと、あの、すみません」
「なんて?」
彼が私に一歩近づいた。
「あ、いや、ごめん、スカイさん」
「さん付けも嫌いなんだけど」
また一歩近づくから思わず一歩引きそうになる。
「スカイ…」
「ん」
イケメンの笑顔は心臓に悪いと知った。