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ゼルダの伝説 時を超えて

第1章 第一章



「いやいや、ありえないです。普通に!!!」
「どうして?」
「そもそもどうやって弓に火が!?」
「そういう仕組みなんだ」
「どういう仕組み!?」
「腹はどれくらい減ってる?」
「スルー!?」

彼は私のツッコミに耳も貸さず戸棚からパンを取り出した。思っている以上に大きくて太いパン。彼はそれをナイフで分厚く切り落とし、丁寧に皿に並べていく。まさか…その上に…チーズをかけるつもりでは…!?

(知ってる。美味しいやつだ…)

彼はまだチーズが完全に溶けきっていないのを確認すると、戸棚から大きな牛乳瓶も取り出した。それを別の鍋へ豪快に入れ今度は釜戸で煮始める。
日の光を浴びてキラリと輝くその牛乳瓶。其れに貼られた紫のラベル。ねぇ、待ってまさか…!?

「待って。…そのラベル…」
「これか?ロンロン牧場のラベルだけど…」
「ロンロン牧場ってハイラルで最も有名な牧場の…!」
「それは牧場がひとつしかないからだけど…」
「それもプレミア会員しか頼むことができないと言われているシャトー・ロマーニ!?」
「…よく知ってるんだな」

興奮気味に語る私に彼は若干引きながらそう答えた。
いや、確かに引かれても仕方のない熱量だとは思う。だけれども、マーロンに住む者なら必ず私と同じリアクションをするであろうことは容易に想像ができた。何故なら。

「そりゃあもう!ロンロン牧場のチーズ、マーロンでは本当に有名で!海を渡ることができないから牛乳とかは流石に飲めないけど…お酒のツマミとして食べるロンロンチーズは本当に最高なの!」
「ふぅん」
「ハイラルに渡った行商人達がこれ見よがしに見せつけてくる牛乳瓶を子供の頃から何度も見てたのよね。そしてみんなこう言うの。コクと甘みがありながら、サラッとした口当たりで飲みやすいって」
「まあ、確かに」
「ふわぁ!まさかそのシャトー・ロマーニを飲める日が来るなんて…!」

人生でこれほど輝いたことはないんじゃないだろうかと思うほど、瞳を輝かせて見つめた牛乳瓶のラベル。そんな私を見て、彼は肩を震わせながら笑うとこう言った。

「……牛乳で喜ぶ人を見たのは初めて」

彼の声に反応し、反射的に見てしまったその表情は、また屈託もない少年のような顔で笑う。僅かに射す太陽の光が彼の瞳に光を映し…真っ直ぐ見つめることができない私は思わず視線を地面に逸らした。

「そう、かな」
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