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ゼルダの伝説 時を超えて

第1章 第一章



スカイさんは私と同年代に見える。ガノンドロフが捕らえられたとき、彼も幼かったに違いない。それはつまり…。

(彼は燃え盛る城下町のなかにいたのかもしれない)

遠くの国にいた私が見たわけじゃないが、何故か其の様子を色鮮やかに思い浮かべることができた。血塗れの兵士、逃げ惑う人々、炎に包まれた城…あれ、なんでお城が燃えているの…?城は、《無事》だったんだけどな。

「さあ、しっかり掴まってろ」
「へ?」
「エポナ、行くぞ」

間の抜けた私の声など聞いてないようで、愛馬にそう告げた彼は馬の腹を蹴った。悲鳴をあげる余裕もなく私はまた、彼にしがみつく。人生で初めて馬車や船に乗ったとき、乗り物酔いに遭ってこれ以上に酷いものは無いと思っていたが、それ以上にひどい揺れがあるもんなんだなと知る。
酔いを感じている暇はないが、考える余裕がある乗り物の方が乗っていて幾分かマシに感じた。

グラグラと揺れながらしがみつく私に揺さぶられることもなく真っ直ぐ座って走り続ける彼は、こういったことに慣れているんだろう。狩人というくらいだから、馬に乗りながら狩りだってするに違いないし、案内をすることもあるのなら、私以外を馬に乗せて走ることもあっただろう。

そう考えたのは自分自身のくせにチクリと胸が痛んだ。

(何勝手に想像して傷ついてるのバカ)

きっとこれはキラキラしている舞台俳優を遠くから眺めているような感覚と同じで、恋ではない。恋であってはいけない。

急接近している今、彼の鼓動が微かに聞こえる。規則正しくゆっくりと鳴り響く音は心地がいい。目を閉じてその音を聞いていると、流れていく風の速さも消えていくようだった。
微かに目を開いた先は青々とした草原が広がっている。ところどころに魔物達が見えるが、彼はそれに追いかけられないルートを知っているようだった。

(随分、冒険に慣れている人なのね)

頻繁に外に出るハイラルの行商人ですら、きっとここまで真っ直ぐに、だけど魔物に追われることがないルートは知らないだろう。
スカイさんは謎で溢れている。普通の人間が立ち入ることのできない森を自由に行き交うことができ、ゼルダ姫から「唯一の友人」と呼ばれ、一介の兵士からも信頼を寄せられていた。

そして今回の神託の件にも関わることが許されたヒト。

(普通の狩人じゃないことだけは、私にもわかるわ)
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