第7章 油断大敵
「安室さん。ちょっとこの子寝かせるので、お仕事してて大丈夫ですよ」
「悪い。任せた」
こくりと頷いて、再び抱き上げる。
お客さんは居なくても、仕込みやら片付けやら、喫茶店の仕事は何かしらあるらしく安室さんはカウンターの中に入っていった。
首もすわってるし、たぶん三ヶ月くらいかな?
お尻をトントン叩きながらゆらゆらと揺らしていたら徐々に泣き声が小さくなり、5分もしないうちに眠ったようだった。
「助かった」
いつの間にか隣に来ていた安室さんはホッとしたような顔で赤ちゃんを覗き込んでくる。
詳しく聞けば毛利さんの所に来た依頼主が夕方まででいいからと赤ん坊を置いていってしまったらしい。
蘭ちゃんは今日は帰りが遅いし、毛利さんも泣き始めた赤ん坊を持て余していて、たまたま用事があって上に行った安室さんに押し付けて出掛けてしまったらしい。
それで大丈夫なのか、探偵業。
赤ん坊の母親はシングルマザーで頼るところもなく、おそらく精神的に追い込まれていたのだろう。
最低限の荷物は置いて行ったらしく、安室さんに確認してもらったら、哺乳瓶とオムツはマザーズバッグに入っていて、一組の着替えと清潔なタオルが一枚入っていた。
「それで、夕方まで面倒見るんですか?」
「毛利さんが戻ってくるまでは、仕方ないだろ」
「まあ、そうですね。お客さん居なくてよかったですね」
マスターが準備中にしていったようだった。気付かなかったよ。
「何か飲むか?」
「え?」
「急に呼び出して悪かった。奢るぞ?」
「んー。なら、アイスコーヒーで」
赤ん坊をゆらゆら揺らしながらリクエストすればすぐにコーヒーを用意してくれた。