第6章 生きる意味を~数年後の自分~
「っ!」
こめかみのあたりに強い衝撃を感じた。
視界が暗くなっていく。
「リヴァイ…」
会いたくてたまらなかったはずの、その名を呼んだ。
その瞬間、完全に何も見えなくなった。
―!
!
大丈夫?
誰だ…?
!
あぁ、ずっと聞きたかった声だ。
愛しくてたまらない。
リヴァイ―!
「リヴァイ…」
自分の寝言で目が覚める。
いつもそうだ。
こうやって懐かしい名を呼んで目が覚める。
ここはどこだ…
地下街とさほど変わらない湿った空気。
石で作られた壁。
ここはどこだ?
徐々に視界がはっきりしてくる。
ベッドに寝かされているようだ。
左を見ると縦に何本も伸びた鉄格子と、それの向こう側に立つ誰かがいる。
逆光で見えない。
「おい、テメェ」
「!」
「チッ…起きるのがおせぇ。待ちくたびれた」
…………?
リヴァイだ。
「リヴァイ!」
「お前、俺のことを呼び捨てで呼ぶのか」
「久しぶり…」
「あぁ?昼に会ったばかりだろうが。それよりお前に聞きたいことが山ほどある。まず一つ目だ。なぜ俺に切りかかってきた?」
「…答えられません」
「答えろ」
「嫌です」
「…仕方ねぇな。レスタを憲兵団に引き渡すしかねぇか…」
「はぁ⁉なんでレスタが出てくるんだ!」
フンっと鼻で笑ったあとに言った。
「エルヴィンから言いつけられている。命令を聞かないようであればそうしろ、とな」
クソが…
こいつら、腐ってやがる。
「もう一度聞く。なぜ俺に切りかかった?」
「…恨みを晴らすため」
「何の恨みだ?俺はお前に何か恨まれるようなことをした覚えはねぇ」
…え?
本当に覚えてないのか?
なら、もういい。
今までの思い出にはふたをしてしまおう。
そして、極力思い出させないように。
「…すみません、人違いでした。歯向かうような真似をして申し訳ありませんでした。兵士長。」
黙ってオレのことをじっと見ていたリヴァイがようやく口を開いた。
「…お前と俺は会ったことがあるのか?」
「ありません」
そのまま忘れていて欲しい。
新しい恋をしていて欲しい。
あの日オレにぶつけた歪んだ恋愛感情を忘れたままでいてほしい。
もう思い出さなくていい。