• テキストサイズ

夜明けと共に

第15章 夜明けの空


一人、自室の丸窓から夜空を眺める。

照らしていた月明かりが薄くなり、少しずつ空の色が変わり始めてきた。

ふと、丸窓から見えたのは、一片の花弁。

蓮月は羽織を掴むと、未だ暗い廊下を走り出した。
出来るだけ静かにでも急いで駆け抜ける。

玄関を開け、また走り出す。

本丸の玄関口、大きな鳥居の前に立つ。乱れる息を少しずつ直し。前を見つめた。

夜明けの空色と共に、蓮月の前に現れたのは紛れもない彼。

カソックが少し肌寒い風と一緒に揺れる。

「っ…、おかえりなさいっ!!」

めいいっぱい大きな声で彼に向かい叫ぶ。

「へし切長谷部、戻りました。」

微笑む一振に、蓮月は駆け出し抱き締めた。


夜明けの空に藤と桜の一片が風に舞って消えていった。




END

/ 51ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp