第1章 1#
「いやとか言わんでくださいよ」
容赦もなく密の奥まで貫かれた。
『あぁ!!』
「いった…爪立てすぎ…」
シャツを握る手に力を込めすぎて爪まで食い込んでいる。
「痕になったらどうしてくれるんすか」
『っ…ごめん…』
「…あんたの爪痕ならそれもええかもしれんけど」
の窺うような視線を見詰め返した。
「キスマつけて」
『私が…?』
「はい…俺に」
『どうして…』
微笑みながら唇を重ねる彼に踏み込むなと言われているようで。
言われた通り首元を控えめに齧り吸い上げる。
「ほんまにつけるんすか?」
『だって…?』
「断らんでええの?謙也さんに聞かれたらなんて答えよ?先輩のすよ、言うてしまおか」
『やめて!』
夢から覚めたかのように睨むがとても腹立たしかった。
「どうするんすか。謙也さんが先輩のこと好きやったら」
『…そんなわけない』
「そうやろな」
自分で言っておきながら他人に肯定されたことに涙腺が緩む。
「彼氏でもない男とこんなことできるんやしな」
瞳から零れる雫。
「何泣いてんすか…冗談や。誰にも言いませんて」
『財前くんに言われたくないよ…脅して触ってきて…っ』
引き寄せ口付けながら、親指で花芯を突く。
『んっっん…!』
口を割って入る器用な舌に指先から脱力した。
「そう。俺も同じ」
何が、と思ったが強い快感に耐えるのが精一杯だ。
「我慢すんなって…ここ数日間ほんとはしたかったんやないんすか」
否定はできない。頭が真っ白になる感覚に囚われたままなことは間違いなかった。
「どうなん?したかった?」
毛頭否定などさせる気のない愉しげな表情を浮かべる彼に頷くのも怖くなる。
『わかん…ない…』
「は?分からんとか…以前より濡れてきてるん知ってる?」
『っ…』
沈黙になると同時液体の混ざる音が目立つ。
『…っは…ぅ』
奥歯を噛み締めて堪えるが、上り詰めるか否か限界のラインを狙われているのが分かった。
「それ抵抗のつもりなん?誰も来ませんて…こんなとこで喘ぎ散らしたところで」
しかし絶対とは言えない。
「聞きたい。先輩の気持ち良さそうな声」
優しい瞳に引き込まれそうになる前に目を逸らした。