第2章 #02
二人同時にロウソクに花火を近づけると、私たちの間に入り込むようにして研磨が新しい花火を取りに来た。
凄いわざとらしくてありがたい行為……。
研磨は無言のまま黒尾さんを見上げる。二人の仲では、視線だけで言いたいことが伝わってるような雰囲気だった。
「……」
「……」
え、なに……。睨み合ってるわけじゃないよね。
心做しか見下ろしている黒尾さんの視線に、一触即発かと胸が嫌な音を立ててドキドキする。
黒尾さん、機嫌悪そう……。
「ったく!お前もう絶対複数本持つなよ!?」
「ええー……って二人ともどうしたの?険悪なカンジィ?」
「いや、別に……」
無言をぶち破るようにして気まずい空間に入ってきたのは、怒りを露わにする英太さんと落ち着き気味にテンションの高い覚くんだった。
ちょうどいいところに……!
覚くんの質問に研磨が変わった様子なく答えると、黒尾さんも研磨から視線を外して雰囲気が普通に戻った。
ひと安心。騒がしくなったのに隠れるようにして、私はため息を吐いた。
「七世」
「あ、うん」
もう一度花火に点火し直すと、研磨が私を呼んで少し場所をずらす。もちろん黒尾さんから離れるようにだ。
ありがたいのはありがたいんだけど、流石に黒尾さんも機嫌悪くするんじゃないかな……なんて思ったり。
「変なこと…されたり、言われたりしてない?」
「今は全然。……ありがと、でも…怒ったりしないかな?こんなあからさまに遠ざけてもらって」
取って食いやしないと黒尾さんが不満げに言ったみたいに、その気がない時にまで警戒されるのはどうなんだろう。
それに幼馴染だっていう二人の仲が良いところを全然見てない。
私のせいなんじゃないの……それって。
そうだとしたら申し訳なく感じてしまう。わざわざ誘って貰ってまで人の仲をギクシャクさせたい訳じゃない。
黒尾さんにとっては私がいない方が皆と一緒に楽しめたんじゃない……?少しでも嫌な気持ちになる要素が、私がいなければなかったはず。
「……」
「俺には七世がそんな顔する理由がわからない」
「だって」
「悪いのはクロだよ。気にする必要ないし、クロだって全く気にしてない。仮に怒ってたとしても、反省させるために必要な事だから」
感情に起伏のない、淡々とした声で研磨は言った。