第2章 #02
花火が途切れてふと視線をあげる。ロウソクの位置からしばらく離れたところにいる覚くんには、ああやっぱり…とか思っちゃった。
覚くんは一人で八本の花火をそれぞれ指の間に挟んで、走りながら花火を振り回していた。……というか英太さんを追いかけ回してる。
何してるの……?!
「見て見て英太くん!」
「おいっ、オマッ…来んな!!」
「綺麗じゃない〜!?」
「マジで追いかけんな!!!危ねえ!!!」
いやいや綺麗さ見せつけるために追いかける必要どこにもないでしょうよ。
見ているだけの私も、追いかけられている英太さんの身になって考えてしまって焦りでドキドキしてる。
もはや覚くんは本気で花火を見せたくてはしゃいでいるのか、英太さんへの嫌がらせ目的なのかわからない。
英太さんは追撃をかわそうと右に曲がるけれど、それより先に覚くんが右側に回り込んで大きく両手を振り上げた。
はやっ……!!
「秘技ゲスブロオォーックウ!!!」
「あっち!…テメッ、馬鹿野郎!!!」
パシコーンッ……!!!
秘技ゲスブロック(?)なるものを炸裂させた覚くんの振り上げた腕から火の粉が飛び散り、英太さんに降りかかる。
流石の理不尽さと物理的攻撃を受けたことからキレたらしく、英太さんが素早く強い力で覚くんの頭をひっぱたいた。
あれは熱いし今のは絶対痛い……!
二人の痛みを思うだけで顔が歪んでしまう。
「ありゃりゃ」
「あれは痛えな」
「やべえ傑作だっ…笑えるっ」
隣からもクスクス聞こえる笑い声。
なんで笑えるかな……もしかして別の生命体?違う星からでも来たの?
当事者以外の人達は、何故かその様子を見て笑ったりしてるんだけど……。まさかこれも男女の差で片付けられてしまうものなのか。
腹を抱えて笑う貴大さん。黒尾さんは二人をもっと煽る、煽る。
それ以前に誰も二人の心配をしてないのが不思議だ。わけがわかんない……。
新しい花火を取りにロウソクの元に行くと、ちょうど取りに来た黒尾さんが二本取って一本を渡してくれた。
「ほれ」
「ありがとうございます…」
「別に取って食いやしねえって」
恐る恐る花火を受け取る私に対して、黒尾さんは笑顔から不満げに眉を下げる。
そうは言っても気をつけるって言っちゃったしな。