第2章 オレはもうぼっちゃまじゃない
高校生活にも慣れてきたこの日、とある怪盗の話で学校内は賑わっていた。
「今日の新聞見た!?」
「ねこ怪盗だっけ?」
ねこ怪盗って……
シャノワールといえば黒猫のベネチアンマスクを付けブルーとグレーのオッドアイで、黒装束という見た目に加え神出鬼没だからと、海外では魔女の飼い猫なんて噂もあったほど。
確か世を賑わせている怪盗なはずだけど、と思いながら怪盗の名前が出てこない美紅に、シャノワールね。今日の新聞に載ってたのは怪盗キッドの方だよ、と伝えると、あーそれそれ、という美紅。
そう〜!見てみた〜い!
絶対イケメンだよね〜!
怪盗キッドの話題に盛り上がる女の子たちに、でも8年前にもいたんでしょ?キッドとか言って、いい歳こいたおっさんじゃない?という美紅は、かなり美人なのに同性からも好かれるのはこのサバサバした性格からだろう。
怪盗キッドの話に盛り上がっていると、何よ〜?と不審がった青子ちゃんの声が聞こえ、目を向ける。
「今日は…何色…かなっ?」
そう言いながらキリキリと音をたて360°回転した快斗の首に、周囲の会話も止まり教室内がシンとする。
するといきなり快斗の顔がポンッと軽快な音と共に爆発した。
首は伸び、口から旗が飛び出た快斗の顔に周囲が驚いていると、白か…と呟く快斗の声が聞こえる。
「くっくっく、いやぁ白はいいよ、清潔で♡」
よく見ると、脚に学ランの上着を着せ、逆立ちしている快斗。
逆立ちしてることにより、快斗の目線は座った青子ちゃんのちょうど腰の高さなことから、何をしていたのか容易に想像ができ、思わずため息をついた。
幼い頃から盗一おじさまにマジックを習っていた快斗。
マジックの腕だけではなく、外見は盗一おじさまと千影さんのいいとこ取り、頭も良く話しかけやすいというかなりハイスペックなはずだけど。
高校生にもなって未だに女の子のパンツを覗く快斗に呆れた目を向ける。
いつものように始まった江古田名物の〝痴話喧嘩〟は、授業が始まっても収まらず。
「いくら快斗でもね、怪盗キッドには勝てないんだから!」
「怪盗キッドだぁ〜?そんなヤツはオレがとっ捕まえてやるぜ!」
しまいには、そんなことを言い早退していく快斗を私は黙って見ていた。