第2章 オレはもうぼっちゃまじゃない
──おやじは…怪盗キッドだったのか……?
考え込んでいたところに再び快斗の声が響き、ハッと意識を戻す。
頷いた寺井さんに向け、そうか……と呟いた快斗の声に唇を噛んだ瞬間、屋上のドアがバンッと開き、警察がなだれ込んできた。
「「「見つけたぞ!怪盗キッドだ!!」」」
「オレがおとりになるからその隙に!」
「でも、ぼっちゃま…」
「オレはもうぼっちゃまじゃない。怪盗キッドだ!」
そんなやり取りを聞きながら、本来の目的を果たすため気を取り直そうと息を吐く。
貯水タンクの上に足を組んで座り、注目を集めるため咳払いすると、中森警部が持っている懐中電灯が私を照らした。
「お前は……怪盗シャノワール!?今日は予告状は出していないはずじゃ…!?」
「Bonsoir 中森警部♡ 今夜は日本で噂になっている怪盗さんに挨拶をしに来たの」
声を張り上げる中森警部へそう告げると、中森警部の向こうで怪盗キッドに扮する快斗が目を見開いてこちらを見ているのが視界に入る。
「ええい!なんだか知らんが、怪盗キッドと怪盗シャノワールを捕まえろー!!!」
中森警部の声を合図に駆け出す警官たち。
寺井さんと快斗、2人の怪盗キッドが逃げやすいよう警官たちの視界を遮るため、辺りにたくさんの黒い羽根を撒き散らす。
──A bientot. 怪盗キッドさん?
大量の羽に騒ぐ警官をすり抜け、一人の警官の耳元でそう告げた私はビルから飛び降りた。