第2章 オレはもうぼっちゃまじゃない
…は?え?怪盗キッドが2人!?
こちら側に顔を向けている怪盗キッドが、恐らくたった今警察から逃げてきた怪盗キッドだろう。
とはいえ、その怪盗キッドは仮面を被っていて、ましてやもう1人、仮面を被った怪盗キッドが来る前に屋上に来ていた人物はこちらに背を向けているため2人がどんな顔をしているのかまでは確認ができない。
怪盗キッドが2人とか聞いてないんですけど…
怪盗キッドが屋上へ逃げてきたら姿を現そうと思っていた計画は完全に崩れ、貯水タンクの影に隠れたまま息を潜め2人の様子を伺っていると、2人の怪盗キッドが動きを見せた。
仮面を被った怪盗キッドが、覚悟!ともう1人の怪盗キッドへ掴みかかるも、2人はただすれ違っただけで、お互い背を向けた状態で動きが止まる。
すると仮面を被った怪盗キッドが膝をつき、パキッと音を立て顔から仮面が落ちた。
背を向けていた怪盗キッドはその場を動かなかったように見えたが、よく見ると上着の袖から見えているのは脚で、スラックスの裾から覗いた手には銃が握られている。
その光景にデジャブを感じていると、膝をついた怪盗キッドが驚いたような声をあげた。
「と、盗一様!?あなた様の付き人であった寺井でございます!盗一様の仮の姿である怪盗キッドになりすまし、盗一様を殺したヤツらをおびき出そうと…」
「おやじは殺されたのか!?だれに殺されたんだ!?」
「快斗ぼっちゃま……?」
2人の会話からそれぞれの怪盗キッドの正体が判明した反面、何も知らないはずの快斗が怪盗キッドの格好をしてここにいることに疑問が湧く。
会話から、予告を出した怪盗キッドは寺井さんだったとして、快斗は?
なんで快斗が怪盗キッドの格好をしてるの?
格好だけではなく、快斗の手に握られたその銃は、怪盗シャノワールも愛用しているトランプ銃だった。