第3章 魔物の脅威
クォーターは4分の1って意味で、ハーフなら2分の1なんだって。初めて知った。ヤチさんはやっぱり物知りだなぁ。
で、キノシタさんのおばあさんに当たる人が魔族の人らしい。キノシタさんの仕事は、魔族が作る薬草を人間の栽培する野菜と引き換えに貰ってくる仕事なんだって。もちろん、取引先は魔族。
危険な仕事だけど、キノシタさんは4分の1が魔族だから相手に信用されてて結構安全、らしい。
そんで今、ナリタさんがキノシタさんに送った連絡鳩が帰ってきた。
ナリタさんが手紙を開いて読むんだけど……
「…………」
ナリタさんの顔がみるみる変わる。嫌な予感がする。
「あー、その………言いにくいんだけど……」
歯切れの悪いナリタさんの言葉を待つ。
「しばらく帰れない、らしい」
え。
スガワラさんがナリタさんから手紙を奪って自分で読む。
「こりゃ……どうしようもない、か」
スガワラさんは諦めた声を出した。
食堂のテーブルに置かれた1通の手紙。
そこには、
『帰りに使う道が土砂崩れで通行止めされてます。復旧まで2週間程見込んだ方がいいかもしれません。迂回ルートを探してますが、村に帰着するのは2ヶ月以上後になるでしょう』
とんでもない悲報だった。
アキテル先生は唸る。
「夢蟲の進行は基本、人間の力じゃ止められない。でも、方法がない訳ではないんだが……」
アキテル先生は俺を見て、悔しそうな顔をする。
「哀しいかな、今のヒナタくんにはちょっと難しいかもしれない」
「そんなこと言わないでください!!」
叫んだのはナリタさんだった。俺はナリタさんの激情を初めて見た。
アオネさん、ヤチさん、タナカさん、ニシノヤさん、スガワラさんも驚いてナリタさんを見ていた。
「方法はなんだっていい!難しいかどうかは本人が決める事です!キノシタが帰ってくるまでに、やれる事があるならやりましょう!」
ナリタさんはアキテル先生をしっかりと見て、言い切った。
俺は思わず椅子から立ち上がったが、右脚に力が入らなくて松葉杖にもたれる。ヤチさんに支えられながら、アキテル先生に頭を下げた。
「俺からもお願いします!俺にはやらなきゃいけない事があるんです!助かるなら、藁にも芒にも縋ります!」
アキテル先生は俺を優しく撫でた。
「わかった。今日から始めよう」
景色が明るくなった。