第3章 魔物の脅威
「…………」
「どう、ですか?」
スガワラさんが静かに聞く。
俺のベッドの周りには、ヤチさん、アオネさん、スガワラさん、村の診療所のツキシマ アキテル先生とその弟のケイ、薬屋のシマダさんの代わりに弟子のヤマグチ タダシがいた。
「…………」
アキテル先生は黙ったままだった。
スガワラさんも静かに待つ。
「…………ごめん、俺には、どうしようも、できない」
…………え。
「夢蟲って知ってるか?」
ゆめむし?
「所謂、寄生虫だと思ってくれ。コイツ単体だと害はないんだが、集合すると生き物の脳に住み着いて、少しずつ侵食していく。毎晩悪夢を見せられるっていうが、覚えてるやつはそう多くないから発見が遅れやすい。『人が変わった』って言われて初めて気付くケースが多い」
アキテル先生は俺の頭を優しく撫でた。
「足の感覚が無くなったのは脳に異常をきたしているからだ。魔王は関係ないよ」
先生はきっと、俺を安心させようとしてくれている。でも、魔王のあの顔が離れない。怖い怖い怖い怖い怖い……
「夢蟲を駆除しても、その恐怖心をちょっとでも和らげなきゃ、また寄生されるかもな」
スガワラさんがそう言った。いつもの笑顔で。
「ひ、ひ、ヒナタ、し、しん、死んじゃわない、ですよね?」
ヤチさんはぼろぼろに泣いて俺の布団にしがみつく。
アキテル先生は困ったように苦笑いを浮かべたが、急に目を見開いて何かを思い出したように手を叩いた。
「そうだ!キノシタくん!彼ならなんとかできそうだ!」
「えぇ!?なんで………ってそうか!!」
スガワラさんが素っ頓狂な声を出しながら気がついた。
「あいつ、人間と魔族のクォーターだったな!何か知ってるかも!ちょっとナリタに連絡とって探してくる!」
スガワラさんは慌ただしく部屋を出て行った。
クォーター?よくわからないけど響きがかっこいい!